正信偈

　　　　　　　　 ☆☆　お経文　☆☆

　　　　　　天親菩薩論註解(てんじんぼさつ　ろんちゅうげ)
　　　　　　　　　　　　　　　天親の論　釈しては
　　　　　　報土因果顕誓願(ほうどいんが　けんせいがん)
　　　　　　　　　　　　　　　浄土にうまるる　因も果も
　　　　　　往還廻向由他力(おうげんえこう　ゆたりき)
　　　　　　　　　　　　　　　往くも還るも　他力ぞと
　　　　　　正定之因唯信心(しょうじょうしいん　ゆいしんじん)
　　　　　　　　　　　　　　　ただ信心を　すすめけり
　　　　　　惑染凡夫信心発(わくぜんぼんぶ　しんじんぽつ)
　　　　　　　　　　　　　　　まどえる身にも　信あらば
　　　　　　証知生死即涅槃(しょうちしょうじ　そくねはん)
　　　　　　　　　　　　　　　生死のままに　涅槃(すくい)あり
　　　　　　必至無量光明土(ひっしむりょう　こうみょうど)
　　　　　　　　　　　　　　　ひかりの国に　いたりては
　　　　　　諸有衆生皆普化(しょうしゅじょう　かいふけ)
　　　　　　　　　　　　　　　あまたの人を　救うべし

　現在の中国南北朝時代に江南あった、梁(りょう)の武帝(502年～557年)は、曇鷲(どんらん)大師を菩薩と仰がれ常に大師の居られる方向を礼拝しておられたと伝えられます。

　曇鷲大師は前回お話した通り、仙経（長生不死の仙術）を焼き捨て、天親菩薩の『浄土論』を註釈され、『浄土論註』を書かれました。この書は、浄土真宗の本願他力のみ教えの根拠をなす書物です。
　親鸞聖人も、ご自身のお名前「親鸞」は、天親菩薩の「親」と、曇鸞大師の「鸞」から頂いておられる事からして大きな影響を受けておられます。

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　大師はこの書で、ご自身の信心を述べられ、私が報土(＝浄土)に生まれる因も果も、ともに阿弥陀如来の誓願(本願)によることをあらわされました。
　また「回向」とは、本来自分の功徳を他に施してそれによって浄土に向かうことですを指します。ところが曇鷲大師は、私が浄土に生まれる(往相回向)だけではなく、浄土で仏に成らせていただいた私が、浄土からこの世に還り来て、迷いの衆生を救うはたらき(還相回向)をするという、往相と還相の「二つの回向」があることをあらわされました。

　「往相」と「還相」の二つの回向は、私が阿弥陀如来の願い(本願)を聞かせていただくこと(信心)一つであり、それはすべて阿弥陀如来の本願のはたらきによると示されました。

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　どんなに煩悩に染まった私(凡夫)であっても、ひとたび信心をいただくと
次のような身と成らせていただくのです。
　１つには、生死(しょうじ)の境涯・迷いのこの世界にありながら生死を超えた、そのまま涅槃(さとり)の身となり、無量光明土(＝浄土)の世界の価値観を生きる身とさせていただく。
　２つには、闇を迷い続けるすべてのもの(諸有の衆生)を導くという、還相回向の身にさせていただくことだと示されます。

　信心のはたらきとはそのようなものであると、曇鸞大師はお述べになりました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～つづく～