東海道(当時の鎌倉街道)は、教覚寺を過ぎてすぐに安倍川を渡ります。
現在の安倍川は、江戸時代の治水工事によって、聖人の頃とは大きく流れを変えています。
上の資料によると、かつては駿府城跡付近を流れていたことがわかります。
しかし昔も今も、大雨の時以外は浅い川であったことは変わりません。
「親鸞聖人正明伝」によると、光信坊宅を出発した聖人一行は安倍川にさしかかりました。
しかし、折からの大雨によって安倍川の水かさは増しています。大勢の旅人達は足止めされていました。
聖人一行も、阿弥陀如来像を納めた笈(おい)を下ろし、腰掛けて様子見です。すると背後から一人の僧がやって来ました。
新潟県上越市 国府別院の像
「私はこの川をよく知っているので、案内いたします。水は深くないので大丈夫です」
その僧の言うとおり水位は膝下までだったので、聖人一行は無事に渡り終えることができました。
大役を果たすと、その僧は笈の中に入って行ってしまいました。驚いて笈の蓋を開けると、如来像の膝から下が水に濡れていました。
その晩聖人一行は、川向かいの手越の地に宿をとりました。
お供の一人の僧が夢を見ました。
夢枕に先程の如来が現れ、「無事に川を渡れて嬉しいか」と訪ねたのです。
お供の僧は、「今日の水難をも救ってくださったので、私が浄土へ生まれ往く真実の救いは間違いない事だと心強く感じました」と答えました。
すると如来は手を打って笑い、「あなたは今まで、広大なる仏の救いを知らなかったということか」と仰ったところで夢が覚めたと言うことです。
所在地 安倍川河畔手越地区
静岡県静岡市駿河区手越
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