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断食日記
2003.４.２５掲載
副住職 菅原智之
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断食終了。ゲッソリの図
まず最初に。これは修行じゃないですよ。
イラク戦争の被災者に思いを巡らせて、爆撃のあった２００３年３月２０日午前１１時３０分から、仏教者によるリレー断食が行われました。
イラクの人々と同じ気持ちになれる訳ありませんが、少しでも痛みを共にすることによって、寄り添うことができるのではないか、と思います。
そして。
ダイエットという副産物もあるのです〜。
同時に食に対する思いも深まりまるのです。
◇４月２０日 体重６１．２キロでスタート
いよいよリレー断食の当番の日。夢にうなされた。食事をしたくてもできない夢。そして食べても食べてもお腹がふくれない夢。断食中に食べてしまった夢。あー、憂鬱。
朝、断食前の最後の食事をとる。
食パンに牛乳。今までこんなにも食パンをかみしめことがあっただろうか。じっくりと味わって食べる。ああ、これから７５時間、水だけの食生活。はたして体がもつのだろうか。大きな不安が頭をよぎる。
昼食から断つことになるのだが、お参りが忙しく、忘れていたといった感じであった。
夕食も抜いた。これで２食断食。が、覚悟があったからか意外と大丈夫。お腹が空かない。水とお茶を大量に飲む。カロリー不足によるためか、どっと疲れがでた。熟睡。
◇４月２１日 体重６０キロ
意外と食べ物の夢は見なかった。夢を見るカロリーさえもなくなってしまったのだろうか。
朝の寝起きはぐったり。さて、朝食を…、そうだった。断食中だった。早くご飯が食べたいなー。２３日が待ち遠しい。水水と。
昼は全くお腹が空かず。普段は空腹で七転八倒するタイプなのだが、どうしたことか。やはりお腹が覚悟しているからなのか。
しかしテレビもラジオも新聞も、どうしてこんなに食べ物の話題があふれているのだろうか。飽食日本。食を抜いては生きられない人間。人間において食がこんなにも大きな比重を占めていたとはねー。今まではそれがあたりまえと思っていたし、気がつかなかったなぁ。
食べ物への思いが募る。「カレー食べたいなー。ラーメンも。豚カツ、うどん、スパゲッティー…（好みが子供っぽいなぁ）。あー、食べたい食べたい、お腹いっぱい食べたい！」。
きっとイラクやアフガニスタン、そして北朝鮮、世界中でたくさんの人がこんな思いでいるのだろう。私は後２日で食べられるから我慢できるし、気力も出るのだが。
断食が終わったら豚カツ食べようと心に決めた。しかし、彼らは…。食べることができない苦しみ。普段は想像つかないことだ。満腹の腹をさすりゲップをしながら、餓えている人々へのミサイルのボタンを押す。また押すことを支援する。安全地帯から論ずるところに、戦争肯定論が出てくるのであろう。
夜。後１日半。もうぐったり。寝よー。
◇４月２２日 体重５９．４キロ
午前中はグッタリ。後１日もつのか？
こんなにひもじい思いはしたことなかったよなぁ。
日本の戦中戦後のひもじさを想像する。
戦争体験者のほとんどが反戦を唱えるのは、この苦しみを自分で経験したからだ。安全地帯からはどうとでも言えるものだ。安全なんだから。
戦後生まれの世代に戦争肯定や戦争黙認論者が多いのは、この苦しみを味わったことないからに違いない。まっ、私の苦しみは、所詮平和な社会の中でのわずか３日間の出来事だが。暴力や略奪の横行する中での空腹感。生きていることすら嫌になることであろう。
◇４月２３日 体重５８．４キロ
朝。起きられない。グッタリ、そして吐き気。吐いてみるが何にも出ない。当たり前だ、水しか飲んでいないのだから。しかし、もう限界だ。力が入らない。気力もない。
私は断食４〜５日で昏睡状態に陥るであろうことが想像される。まったく弱いものだ。
ただ今１１時１５分。後１５分だ。終わるときが来ると知っているから我慢できるんだよなぁ。
１１時２５分。後５分。
そして１１時３０分。あっけなく終了。
早速お粥をいただく。何の味も付いていない「ただのお粥」だが、こんなに豊かな味わいがあるとは。がっつく。
「あー美味しかった」。有り難くいただいた。食べ物の尊さ、食べることが出来ることの有り難さ。
だから手を合わせて「いただきます」「ご馳走様でした」なんだよなぁ。飽食だからこそ、犬みたいに無言で食べるんだこの国は。この経験を忘れないようにしたいと思う。
◇断食を終えて
実際に体験してみて、空腹感は耐え難いものであると痛感しました。
私の場合は自分で選択したので誰のせいでもないのですが、権力者のエゴによってもたらされた数々の悲劇の中を生きる人には、きっと耐えられないものでありましょう。
結局苦しむのは我々庶民。
どんな理由があろうとも、戦争をしてはならないと思いました。
◇ ◇ ◇
後日談：体重はアッという間に戻りましたぁ〜残念。
合掌
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