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| バングラデシュ紛争地帯にて考える 〜人間とは〜 |
その３ 人間とは…
ベンガル人によって迫害されるジュマの人々。
しかしベンガル人が凶暴なのかというと、それは違います。とっても純朴な人々です。
そしてジュマの人々も内部抗争で暴力沙汰になることもあるのです。
一体人間とは何なのでしょうか。
１人１人は優しい。それは犯罪者とて同じです。
死刑囚への教誨をしているカトリック神父Ｔさんは、愛憎のもつれから３人を殺害してしまった
Ｋ死刑囚に対面したときの様子を次のように述べられています。
Ｔ神父 「…とにかく私にとっては初めての死刑囚です。それも人を三人も殺している。
会う前は正直、気が重かった。でも会ってみると普通の人なんですよね。
小柄で、頬がこけていて、青白くて。面会が終わったら 『ありがとうございます』 って
頭を下げて、とっても丁寧な受け答えで。…なんも変わらない。ほとんど僕らと
変わらない。だから彼らと僕らとの境目、それはもちろん、事件を起こしたかどうか
なのだろうけれど、でもその根底にあるもの、…それをいつも考えています」
森達也著「死刑」(朝日出版社)より
様々な条件が重なって、人は人を殺める。
しかし別の条件が重なれば１人１人は優しい。
“縁”によって起こり、縁によって変化し、何をしでかすかわからない存在、それが人間。
我は縁起の中にあり。
「さるべき業縁のもよほさば、いかなるふるまひもすべし」 歎異抄１３条
親鸞聖人のお言葉が突き刺さります。
人を凶暴にするもの
「自らが愛おしい」。我々はこの思考回路から逃れられません。
故に、愛する自分を肯定する条件が揃っているときは優しいのです。
しかし愛する自分を否定されたとき、攻撃されたときには凶暴になります。
愛する自分を否定されることとは、つまり居場所が奪われるということです。
自分の居場所。
2008年に秋葉原で無差別殺傷事件を起こした加藤容疑者が求めていたものも、
それであったといわれています。
自分の居場所とは「自分が認められている」という肯定観です。
しかしそれを奪われる・奪われかねない状況に追い込まれると、爆発します。
そのきっかけは、人間関係であり、経済状況でありましょうか。
ＣＨＴ（チッタゴン丘陵地帯）問題の根底は、まさに経済状況です。
貧困
もともとＣＨＴは豊かです。焼き畑で食べていける土地ですから。
それに比べてベンガル人は貧しいと言わざるを得ません。
何しろ人口密度世界一であり、大した産業があるわけでもないからです。
人々は農業で食べて行かねばなりません。
自らの土地を持たない多くの小作農民達が、食うや食わずの生活をしているます。
少なくない子ども達が親から捨てられ、ストリートチルドレンとなっています。
彼や彼女らがゴミ拾いや物乞いをしている様子を多く見ました。
また、ＣＨＴでジュマを襲撃しているベンガル人達も、非常に貧しい暮らしをしています。
政府の約束と違い、入植地での農地は少なく、収穫量も十分ではないのです。
紛争。
それは「食べていく分以上に持ってしまった一部の者達」と、
「残りの小さなパイを奪い合う多くの人々」という構造が続く限り、無くなることはありません。
悲しいかな、我々は「自らがこの世で一番愛おしい」人間であり、
「他人は二の次でしかない」のです。
つづく
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