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2021.1発行「こうりん」掲載
我がはからいを超えて
住職 菅原智之
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コロナ一色の2020年でした。何とか年を越したという感慨も、膨大な新規感染者数の前には脆くも崩れ去ります。皆様如何お過ごしですか。。
◇念仏者小林一茶
新潟県上越市から長野県北部地域までの北国(ほっこく)街道沿いは、かつて宗祖親鸞聖人が滞在された地域であり、浄土真宗の教えが人々の生活に浸透しています。
江戸中期の1763年、信濃国(しなののくに)柏原（現長野県北部）にて生を受けた小林一茶は、多くの俳句を残し、江戸時代を代表する俳人として知られています。
その一茶は、浄土真宗門徒として教えを深く体得していました。彼の俳句には、阿弥陀如来の眼差しが色濃く表れています。例えば有名な句「やれ打つな 蠅が手をすり 足をする」など。
「蠅は打たれて当然」。それは私の都合というモノサシです。先の句は、生きとし生けるものすべてが尊いという阿弥陀如来の眼差しそのもの。それを感じながら生きた、念仏者の小林一茶でした。
◇念仏は世渡りの秘術ではない
そんな一茶ですが、決して順調な人生ではありませんでした。
幼い頃に母を亡くし、継母との折り合いが悪かった一茶は、１５歳で奉公人として逃げる様に江戸へ。
３９歳時父が亡くなり、継母と１３年に渡る相続争い。５２歳にして結婚するのですが、授かった４人の子ども全員と妻を相次いで亡くしました。
再婚相手との結婚生活は早々に破綻。病の身となり、６４歳で３度目の結婚。しかし自宅が火事で焼失。失意の中６５歳で亡くなりました。決して理想の人生ではなかったのです。
私達は「上手に世渡り」できることこそ良い人生だと考えますが、どれだけ頑張ってもこえられない壁があります。それが「老いと病い」「愛おしい方との死別」そして「死」です。
世間では「宗教はその不都合なことから逃れる為のもの」と受け止められがちですが、仏教・浄土真宗は、世渡りの為の秘術ではありません。「南無阿弥陀仏」と念仏を称えても私の都合は叶わないのです。
◇はからいが取られる
ともかくも あなたまかせの 年の暮れ
俳人 小林一茶
上の句は「他人任せ」という意味ではありません。
「あなた」とは阿弥陀如来のことです。そのお心は「そのままのあなたをすくう」。私が称えるお念仏は、如来の喚び声であると聞かせて戴きます。
思い通りにいかず悲しくて、「何故こんな目に遇わなければならないのか？」と愚痴をこぼさずにおれない現実。でもそれは、損か得かと善し悪しを判断する私のはからいそのものでした。
その全てがそのままに如来に抱き取られる。
だからこそ、転んだり泣いたりしながらも、一茶という「このままの人生を戴く」ことができたのでした。「お陰様でここまで生かさせてもらいました。有り難うございました」と。
それは親鸞聖人の自然法爾(じねんほうに)に通じます。
「自(じ)」はおのづからといふ。
行者のはからいにあらず、
「然(ねん)」といふは、
しからしむといふことばなり。
しからしむといふは、
行者のはからいにあらず、
如来のちかひにてあるがゆゑに
法爾(ほうに)といふ。
親鸞聖人御消息(ごしょうそく＝お手紙)
第十四通
◇あなたまかせ
「来年のことを言えば鬼が笑う」とのことわざがあります。その先人の知恵に苦笑いするしかありません。
図らずも新型コロナ禍は「人生は都合通りにいかない」ということを知らしめました。
でも理想の人生とは違っても、私の歩みはやり直しのきかない、唯一無二の私のものでした。そのことに思いを致すとき、「今・ここの・私」に頷くしかありません。
いろんな事があって、泣いて笑って、すべてが私のはからいを超えた「かけがえなき人生」。
その様に導く如来と共に歩む。「ともかくも あなた任せの 年の暮れ」。
◇ ◇ ◇
阿弥陀如来のお念仏は、困難な状況であるからこそ、聞かせて戴く確かなよりどころです。最新の行事開催状況はＨＰやお電話でご確認くださいませ。新年も共に聴聞させていただきましょう。
合掌 |
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