その１４ 首都デリーと国立博物館 〜疑惑の仏舎利〜
壮大なアグラ城とタージマハールを後に、我々一行は一路首都デリーへ向かいました。
またまた長いバス道中。この旅はバスばすバス…。クッションが良くない上に道路が悪く、大変に揺れます。最初は振動が「電気あんまみたいで気持ちいい」等と冗談を言ってましたが、2000キロ近く乗っていると口数も食欲も減り、ただボーっと窓の外を眺めている時間が多くなりました。
そりゃ事故だってある訳で。頼むこのバスはぶつからないでくれ〜！
デリーの町は、さすが首都だけあったきれいに整備されていました。広い道路に大きな歩道、公園、高層ビル等々。ニュー・デリーと呼ばれる新市街地です。
市内には東京でもあまり見ない新型最高級ベンツが走っているかと思えば、その隣を自転車リヤカーが走り、オートリキシャーという３輪タクシーが駆け回っています。
隣のリキシャーと競争中！
道端には野良牛もクジャクも犬もいます。フンには気を付けなければいけません。ごちゃ混ぜ、混沌。これは日本では味わえません。
旧市街地はオールド・デリーと呼ばれ、道も狭くゴミゴミし、雑踏の軒下で死んでいる人がいても誰も驚かない、そんな所です。
郊外
我々はニュー・デリーの国立博物館へ向かいました。
ここの目玉は仏舎利容器です。“本物”のお釈迦さまの骨（仏舎利）が展示してあるということですが、学界では“偽物 ”と判定されているそうです。
お釈迦さまを慕う人々によって仏舎利は細かく砕かれ、アジアの各地渡りました。東南アジアで見る古いストゥーパは基本的に仏舎利が納められているはずです。また日本の五重塔や三重塔もストゥーパであり、やはり仏舎利が納められているはずです。しかしその真贋は定かではありません。
人目にさらされているこの骨はいったい誰のものなのでしょうか？
これが疑惑の仏舎利です
表庭には大きな石が鎮座しています。ただの石ではありません。一面に文字が刻んであります。紀元前３世紀の初のインド統一国家マウリア王朝第３代アショカ王が、お釈迦さまのことを後の世にまで残そうと、石に刻ませたものなのです。こんなに大きな石によく刻んだものです。驚きました。
でっかい！
アショカ王は仏教を大変に尊び、国中に仏塔を建てられ、また、第３回目の経典編纂会議（！）を開かれた方でした。
お経はお釈迦さまの説法なのですが、当初文字にはされず、口伝で伝承されていました。お釈迦さまのお亡くなりになった後、文字に残そうということになり、お弟子方が集合して、「お釈迦さまはああ言われた」「こうおっしゃった」「そうだそうだ、私もそう聞いた」というやり取りだったかどうかは判りませんが、数回の編纂会議を経ているとのことです。
そして文字になった説法は、三蔵法師方(多数いらっしゃった)の命がけのシルクロードの旅によって中国へ伝わり、そこから命がけの航海の末日本に伝え
られたのです。そこには高僧方の、飛行機で何時間というお手軽な時代には想像もつかないドラマがありました。
多くの方のお陰により、今の私にお経が届けられているのですね。「生老病死」から逃げるのではなく、真っ向から立ち向かい、それを乗り越えていく人生の歩み。お釈迦さまの教えは、この世界にはかない命がある限り、咲き続けることでしょう。
ブッダは微笑む
過ぎ去った日のことは悔いず
まだこない未来のことにはあこがれず
とりこし苦労をせず
現在を大切にふみしめてゆけば
身も心も健やかになる
過去を追ってはならない
未来は待ってはならない
ただ現在の一瞬だけを
強く生きねばならない
《ブッダのことば 法句経 より》
つづく
